○エトリンガイト[3CaO・Al₂O₃・3CaOSO₄・32H₂O]とは
エトリンガイトとは、セメント水和物の1つである。エトリンガイトはそれ自体で強度を発現し、セメント硬化体を膨張させる性質がある。
○海水による劣化
海水に含まれている有害な塩類は硫酸マグネシウム[MgSO₄]と塩化マグネシウム[MgCl₂]であり、硫酸マグネシウムのほうが有害である。硫酸マグネシウムは反応によって水酸化マグネシウム[Mg(OH)₂]を生成し、コンクリートの体積膨張が生じる。また、せっこう[CaSO₄]も同時に生成する。
せっこう[CaSO₄]の一部はセメント中のアルミン酸三カルシウム[C₃A]と反応し、エトリンガイト[C₃A・3CaSO₄・32H₂O]を生成し、体積膨張が生じる。
アルミン酸三カルシウム[C₃A]+石こう[CaSO₄]+水[H₂O]
=エトリンガイト[C₃A・3CaSO₄・32H₂O]
○膨張材
膨張材はセメントおよび水とともに練り混ぜ、水和反応によってエトリンガイト[3CaO・Al₂O₃・3CaOSO₄・32H₂O]あるいは水酸化カルシウム水酸化カルシウム[Ca(OH)₂]の結晶を生成し、コンクリートを膨張させる。
膨張過程におけるエトリンガイトや水酸化カルシウムの生成時には十分な水分の供給が必要なため、材齢初期における湿潤養生が重要である。
○DEF(Delayed Ettringite Formation)
DEFとはエトリンガイトの遅れ生成のことである。コンクリート硬化後、数ヶ月から数年を経てコンクリート中に内存する硫酸塩がアルミン酸三カルシウムと反応しエトリンガイトを生成し、コンクリートの膨張劣化を起こす現象である。
○耐硫酸塩セメント
耐硫酸塩セメントでは、アルミン酸三カルシウム[C₃A]の使用量は4%以下と規定されている。これは、アルミン酸三カルシウムが硫酸塩と反応してエトリンガイトを生成し、体積膨張が生じるためである。
○SEMによる結晶の観察
SEMを使用すると、エトリンガイトの結晶は針状の結晶物として確認できる。
○火害とエトリンガイト
エトリンガイトは多量の結晶水を有するため、100℃程度以上で分離・消失する。