○硫化水素[H₂S]
硫化水素とは、硫黄と水素の無機化合物である。無色の気体で腐卵臭を持つ。悪臭防止法に基づく特定悪臭物質のひとつで、目や皮膚・粘膜を刺激する有害な気体である。空気より重いため、下部に溜まり易い。
※腐卵臭の原因は硫黄[S]ではなく、硫化水素[H₂S]である。
○下水道施設における微生物腐食
下水中に含まれる硫酸塩が嫌気性細菌である硫酸塩還元細菌により還元され、硫化水素[H₂S]が生成される。この硫化水素[H₂S]が流水の乱れで気相中に放射されると、好気性細菌である硫黄酸化細菌によって酸化され、硫酸[H₂SO₄]が生成され、コンクリートが侵食される。
○腐食性ガスによる化学的浸食
硫化水素は硫黄酸化細菌の作用等によって酸化されて硫黄酸化物となり、水に溶解して酸を生成しコンクリートを侵食する。
H₂S ⇔ H⁺ + HS⁻ ⇔ 2H⁺ + S²⁻
ガス状で水中に溶解したHS⁻がカルシウム化合物と反応して容易に溶解するカルシウム塩を生成し、コンクリートを侵食する。
Ca²⁺ + 2HS⁻ → Ca(HS)₂