○分極抵抗法とは
コンクリート表面に当てた外部電極から鋼材に微弱な電流または電位差を負荷したときに生じる電位変化量または電流変化量から、腐食速度(腐食電流密度)と反比例の関係にある分極抵抗を求め、鋼材の腐食速度を推定する方法である。
○原理解説
・分極抵抗
オームの法則より
電流(I)=電圧(E) ÷ 抵抗(R)
ここで、分極抵抗法の測定による電流及び電圧の変化量をΔで表すと
ΔI = ΔE ÷ Rp
Rp = ΔE / ΔI
この Rp を分極抵抗と呼ぶ
・腐食電流密度
また、オームの法則より
電流(I)=電圧(E) ÷ 抵抗(R)
I = E / R
= E × 1/R
腐食電流密度を Ic[A/cm²]
分極抵抗を Rp[Ω/cm²]
比例定数を K[V]
とすると
腐食電流密度 Ic[A/cm²]=比例定数 K[V] ÷ 分極抵抗Rp[Ω/cm²]
Ic = K / Rp
= K × 1/Rp
となる。
・腐食電流密度と腐食速度の関係
腐食のメカニズムであるアノード反応の反応式は
Fe→Fe2++2e- 鉄→鉄イオン+電子
となり、アノード反応で発生する電子「2e-」が腐食電流である
ファラデーの第2法則は
m/M = I × t ÷ z ÷ F
である
腐食電流密度が 1[A]の場合の1年間腐食量を算定すると
m : 重量[g]
I : 腐食電流密度[A]= 仮に「1」とする
t :時間[s]= 仮に「31536000(1年)」とする
M :分子量[g/mol]= 56(鉄の分子量)
z :イオン価数 = 2
F :ファラデー定数[C·mol]= 9.64853×10⁴
となり
m = I × t × M ÷ z ÷ F
=1 × 31536000 × 56 ÷ 2 ÷ 9.64853×10⁴
=9151 [g]
=9.2[kg]
となる。
これは、「鉄(Fe)」が1年間で9.2[kg]分解されたことを意味する。
○適用対象
分極抵抗法はコンクリート構造物中の鋼材腐食の可能性を評価できる。自然電位法と同様、構造物が供用を開始してからひび割れが発生するまでの腐食劣化の初期段階での診断に有効である。
○分極抵抗法の種類
【交流法】
・交流インピーダンス法
・交流矩形波電流分極法
【直流法】
・直線分極抵抗法
○測定手順
複数の露出鋼材間で電気的導通を確認する
↓
コンクリート表面に水道水などを噴霧し、湿潤状態を保つ
↓
測定器の一端を内部鋼材と接続する
↓
測定する鋼材の真上のコンクリート面にセンサーを押し当てる
↓
自然電位を測定する
↓
分極抵抗を求め、腐食速度を評価する
○電気的に絶縁体に近い場合は測定できない
コンクリート表面に塗装等の絶縁材料が被覆されているような場合には適用できない。また、鉄筋にエポキシ樹脂塗装鉄筋や亜鉛めっき鉄筋等の表面がコーティング鉄筋を用いている場合も適用できない。