○補強用繊維の役割
補強用繊維は、コンクリートに混ぜて使用する。コンクリート中に短い繊維を均一に分散させることにより、コンクリートのひび割れに対する抵抗を大幅に改善する。繊維を混入させたコンクリートを繊維補強コンクリートという。繊維がひび割れ間で架橋することで、コンクリートの剥落を防止することができる。
○ポリプロピレン短繊維(PP短繊維)
2015年に「JIS A 6208 コンクリート用ポリプロピレン短繊維」が規定された。JISでのPP短繊維の区分けは、繊維構造、呼び繊度、呼び繊維長による。
「呼び繊度」とは、繊維の太さのことである。一定の長さに対して重さがいくらあるかを測定して数値を求める。繊維の断面形状は真円ではないため、太さの指標として重さを利用した「繊度」としている。
繊維の長さは一定ではなく、ある範囲で分布するので「呼び繊維長」と表現している。
ポリプロピレンの素材自体はコンクリートとの付着性が無いため、表面をエンボス加工したり、形状を変化させたりして付着性を向上させる。エンボス加工とは、凹凸模様を彫った押し型で強圧して浮き出し模様を作る加工法。「エンボス」は英語で「emboss」であり、「浮き出しにする」という意味である。
○補強用繊維の性能
PP短繊維をコンクリートに適用するにあたっては、繊維自体の引張強度、コンクリートとの付着、耐アルカリ性、耐熱性などの評価が必要となるが、繊維自体の規格としてコンクリートに使用された状態での評価は規定されていない。
JISではPP短繊維については下記のように規定している。
【Ⅰ種】
引張強度:250[N/mm²]以上
付着性(曲げタフネス):1200[N・mm]以上
耐アルカリ性:荷重保持率90%以上
耐熱性: 荷重保持率90%以上
【Ⅱ種】
引張強度:400[N/mm²]以上
付着性(付着強さ):2.00[cN・dtex]以上
耐アルカリ性:荷重保持率90%以上
耐熱性: 荷重保持率90%以上
※タフネスとは、供試体が完全に破壊されるまでに吸収するエネルギーである。従来の曲げ強度は供試体にひびが発生する強度だが、短繊維補強コンクリートではひびが発生しても短繊維により耐力が残っているため、タフネスで評価する。
※[cN・dtex]はセンチ ニュートン デシ テックスと読む。テックス[tex]は長さあたりの重さの単位であり、太さの代わりに用いられる。これは、繊維の断面積を測定するのが困難なためである。