失敗と自分の共通点を探そう
失敗から学ぶためには、失敗事例から学び「似たような失敗をしない」ことが大切である。では、この「似たような失敗」とはどのような失敗だろうか。
失敗事例から学びましょうと言うと、誰もが「うんうん、失敗事例から学ぶことは大切だよね」と考える。しかし、いざ失敗事例から学ぼうとすると「私だったらこんなことしない」と感じてしまい、有益な教訓を学ぶことなく終わってしまうことが多い。
ここでお伝えしたいことは、「失敗から学ぶとは、失敗事例に自分を当てはめるのではなく、失敗事例を自分の身の回りに当てはめること」ということである。
失敗をした人もあなたと同じ人間です。頭の良さもあなたと大差はありません。失敗をした人が失敗したということは、同じ状況にあなたがいた場合はあなたも失敗すると言うことです。そのように考えることが大切です。「なぜ失敗をしたのだろう」と真摯に考えるなければなりません。「失敗した人がアホだった」では何も学ぶことはできません。
「失敗事例の当事者の気持ちになって失敗の背景を考察し、考察内容を一般化して、その一般化した内容を自分の身の回りに当てはめる」これが、失敗学の考え方である。
失敗学における共通点探しの例
あるヒヤリハット事例を参考に、共通点探しについて説明する。
ある日、ガス切断機とアーク溶接機を使って加工場で鋼材の加工を行なっていた。季節は冬だった。鋼材加工は手先を使った細かい作業が必要なため、時折ストーブで指先を温めながら作業を行なっていた。
ある時、鋼材をガス切断していた。鋼材が切れたかどうか確認するため、火をつけたまま火口を横へ向け、鋼材をハンマーで叩いていた。その時、「ちょっといいか!?」と加工場の玄関から声を掛けられ、声が聞こえた方を立ち上がって振り向いた。手には火がついた切断機を持ったまま…。
普段は火がついた切断機を持ったまま加工場の玄関を立ち上がって振り向くことはない。しかし、今回はイレギュラーが重なり、火を持ったまま立ち上がって振り返ってしまった。その時、手に持っていた切断機の火は、ストーブの燃料である灯油のポリタンク20リットルに向き、表面を溶かし始めていた………。
この事例の教訓を考える。「切断機の火をつけたままにしない」だろうか。それとも「火を使う場所には可燃物を置かない」だろうか。確かに、それらも大切である。しかし……。これらの教訓を見てあなたはどのように感じますか?「自分のこと」と考えることができますか?私は人ごとのように感じてしまいます。
失敗学では、失敗事例を一般化し、共通点を見つける。今回の事例の教訓を一般化すると
「切断機の火をつけたままにしない」→「危険な物を持ったまま動かない」
「火を使う場所には可燃物を置かない」→「火と可燃物のように、合わさると危険な組み合わせに気をつける」
となる。このように一般化することにより、ガス切断という有資格者しかできないレアな作業での教訓を、誰でも関係する教訓に落とし込むことができる。
一般化を正しくやれば必ず共通点は見つかる
「危険な物を持ったまま動かない」という教訓を家庭に当てはめると「包丁を持ったまま動かない」→「包丁を使っている時は顔を動かさない」という教訓や、「カッターやはさみを持ったまま歩かない」→「カッターやはさみを使う時は、先に切るものを用意する」という教訓が生まれる。
「合わさると危険な組み合わせに気をつける」という教訓を家庭に当てはめると、「カッター等の刃物」と「子供」や、「長髪」と「首かけ扇風機」、「素足」と「タンスの角」、「地震」と「棚の上に仮置きしている大量の物」などなど、家庭でも色々ある。無理やりでもなんでも良い、教訓を自分に当てはめ、自分の役に立たせることが大切である。
共通点を見つける癖をつけよう
他人の失敗から学ぶコツ、それは失敗を一般化して共通点を見つけることである。これを癖にすると良い。テレビのニュースや新聞で見つけた失敗事例を一般化して自分との共通点を見つける。これを繰り返すことで、身の回りの危険の目を摘むことができる。
最後に、繰り返しになるがもう一度。
失敗から学ぶためには
「失敗に自分を当てはめるのではない、自分に失敗を当てはめるのである」
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