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失敗から学ぶためには『失敗を一般化しよう!』【自分と関係ない失敗から学ぶために】

失敗事例を一般化する理由

 失敗学では、個別の失敗事例を一般化して考える。一般化することによって、一見すると自分と全く関係ないような職種・シチュエーションでの失敗事例から自らが学ぶことができる。

失敗学における失敗事例の一般化の例

 あるヒヤリハット事例を参考に一般化の効果について説明する。

 ある日、引越し作業をしていた。今まで住んでいたアパートの2Fから荷物を運び出していた。このアパートは玄関や廊下が狭いため、大型家電は窓から出し入れしなくてはならない。2年前にこのアパートに荷物を入れる時も、窓から荷物を出し入れした。今、重さ40kgある冷蔵庫を窓から出そうとしていた。2年前と同じように、4人がかりで冷蔵庫をロープで吊るしながら窓から降ろすことにした。早速作業を開始した。冷蔵庫を抱えて窓から出し、ロープを引っ張りながら窓から冷蔵庫をぶら下げた。ロープに荷重がかかり「ピッ!!」と張り、窓枠の手すりに張力が働いたその瞬間………窓枠の手すりを固定しているボルトが緩んでおり、「ガタッ!!」と手すりが動いた。その瞬間、窓枠の手すりを固定しているボルトが抜け手すりが落下、冷蔵庫も一気に下へ落下し、窓の下で待っていた友人の上に冷蔵庫が落ちかけた。また、ロープを引っ張っていた4人が窓から転落しかけた

 この事例の教訓を単純に考えると、「窓枠の手すりに荷重をかけるときは、手すりが破損しないかよく確認しましょう」となる。しかし、このような教訓だと「窓から何かをぶら下げる」という特別な作業を行う人だけが学ぶことができる事例となってしまう。

 失敗学では、この事例から一人でも多くの人が学べるように、教訓を一般化する。

一般化の答えは無限大

 一般化の答えは無限大である。今回の事例を一般化する場合、以下のような一般化の例がある。

「2年前にやった作業だから大丈夫だと思った」→「前回大丈夫だったからといって油断してはならない」→「久しぶりにやる作業は劣化等の可能性があるので、何も考えずに前回と同じ方法で作業してはいけない」

「窓枠の手すりに40kgの荷重がかかっても大丈夫だと思った」→「見た目が大丈夫だと思っても、ボルト等の劣化によるぐらつきがある場合がある」→「荷重がかかる部分は実際に手で触り、ぐらつきの有無を確認しよう」

「4人がかりでロープを持っているので、荷物が下へ落ちることはないと思った」→「万が一があるので、重量物直下に立ち入らない」→「物は壊れたら買い換えることができるが、怪我は取り返しがつかない」「危ない時は絶対にすぐに逃げる」

一般化するためには失敗の背景が必要

 一般化をするためには、失敗の背景が必要である。「何故そのような行動をやったのか」「なぜ大丈夫だと思ったのか」。このような情報があると、教訓を得やすい。客観的事実だけでは不十分であり、主観的事実が大切である。

 客観的な事実だけだと、教訓が浅くなる。「点検しましょう」「重量物の下に入らないようにしましょう」といった教訓しか生まれない。そんなことは、言われなくても知っている。浅い教訓は役に立たない。時間の無駄である。

 主観的な事実が入ると、教訓が一気に広く深くなる。「2年前に大丈夫だったから」→「数年ぶりにやる作業は身の回りに何かないか」という気づきを得ることができる。このように考えると、引越し以外の作業でも「久しぶりの作業」というキーワードで注意喚起ができる。

情報がなければ背景を想像することも大切

 今回の例では、冷蔵庫の直下に友人がいてその人の上に冷蔵庫が落ちかけたことになっている。今回の例文では、「なぜその友人が冷蔵庫の直下にいたのか」を記載していない。そこで、今からその友人の行動の理由を推測してみる。理由を推測することで、さらに新たな教訓を得ることができる。

 友人はおそらく「降りてきた冷蔵庫を受け取るため」に冷蔵庫直下にいたはずである。また、「急に冷蔵庫が落ちてきて、冷蔵庫が壊れると思い飛び出てきた」のかもしれない。それとも、「近所の子が遊びながら駆け寄ってきて、危ないから注意をしようと思って冷蔵庫の下をくぐって通過しようとした」のかもしれない。

 このように考えると、「最初からいらない布団等で冷蔵庫を降ろす場所を作ればよかった」「冷蔵庫は元々壊れかけているから、大事なものではないと説明する」「人が近づかないように監視することだけに専念してもらう」など、様々な対策が思いつく。そして、これらの対策から教訓を導き出すことができる。

 以上のように、失敗学では失敗事例を一般化することで教訓を得る。

参考文献

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