1級土木実地試験の過去問を考察する。実地試験は正答が公開されていないため、参考書によって解答が異なる。
設問1
盛土施工時の排水に関する適切な語句を記入せよ
(1)盛土施工中の法面の一部に水が集中すると、盛土の安定に悪影響を及ぼすので、法肩部をソイルセメントなどで仮に固め、適当な間隔で法面に( イ )を設けて雨水を法尻に導くようにする。
( イ )の解答
参考書A:仮縦排水溝
参考書B:縦排水路
【考察】
この問題は盛土施工中に盛土面の排水について問われている。あくまで施工中の「仮」の排水なので、参考書Aの仮縦排水溝のほうが適切である。
しかし、法肩から法尻に水を導く方法を答えればよいので、私が採点者であれば「縦排水路」「縦排水溝」でも正解とする。
(2)盛土内に雨水が浸透し土が軟弱化するのを防ぐためには、盛土面に( ロ )%程度の横断勾配を付けておく。また、施工中に降雨が予想される際には転圧機械などのわだちのあとが残らないように、施工の( ハ )時にローラなどで滑らかな表面にし、排水を良好にして雨水の土中への侵入を最小限に防ぐようにする。
( ロ )の解答
参考書A:4
参考書B:3〜5
( ハ )の解答
参考書A:突き固め
参考書B:終業
【考察】
( ロ )の問題については、( )%「程度」と問題文に書いてあるので、4でも3〜5でもどちらでも良い。
( ハ )の問題は「〜のあとが残らないように」と記載があるので参考書Bの「終業」が正しい。ローラーなどで「締め固め」や「転圧」は行うが、「突き固め」を行うとは一般的に言わない。
(3)盛土材料が粘性土の場合、一度高含水比になると含水比を低下させることは困難であるので、施工時の排水を十分に行い、施工機械の( ニ )を確保する。
盛土材料が砂質土の場合、盛土表面から雨水が浸透しやすく盛土内の含水比が増加して( ホ )が低下するために表層がすべりやすくなるので、雨水の浸透防止をはかるためにはビニールシートなどで法面を被覆して保護する。
( ニ )の解答
参考書A:トラフィカビリティ
参考書B:トラフィカビリティ
( ホ )の解答
参考書A:せん断強度
参考書B:せん断応力
【考察】
( ニ )の問題は土工最重要キーワードのトラフィカビリティである。トラフィカビリティはトラフィックのアビリティで交通の可能性なので施工機械の走行性能と覚える。
( ホ )の問題はせん断破壊についての問題である。解答はそれぞれ「せん断強度」と「せん断応力」になっているが、意味が全く逆である。
せん断破壊は せん断強度<せん断応力 となった場合に生じる現象である。
せん断強度が防御力、せん断応力が攻撃力で攻撃が勝つと盛土が崩壊する。
問題文を読むと( )が低下してすべりが発生すると書いてあるので、参考書Aのせん断強度が正解である。