失敗を主観的視点で考えることから全てが始まる
失敗学を用いて失敗を分析する時は、以下の3つのステップを実践する。
- 失敗を主観的視点で認知する
- 主観的事実を一般化して、教訓を得る
- 教訓を個々に当てはめ、失敗の未然防止を行う
このうち、ステップ1の「失敗を主観的視点で認知する」が最も大切なステップである。なぜなら、ステップ1で誤った分析をした場合、その後の分析も全て誤った結果になってしまうからである。
ステップ1のコツは、失敗の背景や要因を主観的な視点で考察する事である。すなわち、「なぜ、当事者はその時その瞬間、そのように行動する事を正しいと考え、実施したのか」を真摯に考えることである。
なぜその選択を良いと思ったのか
失敗引き起こす原因となった人の行動、それが失敗学の考察対象である。失敗には必ず人が関わっている。「物が故障した」から失敗したのではない。「故障した物を人がそのまま使ったから」「故障する可能性を知っていながら今回も大丈夫だろうと勝手に思い込んだから」「故障したまま使用したら事故が怒るような設計をしたから」失敗は発生する。
失敗が発生する直前、人は何かを考え行動している。失敗するとは微塵も思わず、その行動が正しいと考え行動をしている。その時に「なぜその人はその行動を正しいと思ったのか」を考察するのが失敗学である。
良くない事を良くないと気がつく事で次に繋がる
その人がその時正しいと考えて行動したことが、結果的に失敗につながった。その時のその人の立場に立って、その人がどうすべきだったかを考えよう。その時にその人が知り得なかった情報、すなわち結果論は不要である。結果論で反省しても役に立たない。その時のその人の気持ちになって考えよう。
その人の立場になって考えることによって、有益な教訓を得ることができる。「マニュアルがなかった」から失敗したのではない、「その薬品が危険だと知らなかった」から事故が置きたのである。やるべき対策は「マニュアルを作る」ではなく、「薬品の危険性を理解してもうらう」である。その対策を実施する1つの方法として「マニュアルを作る」が出てくる。
表面上だけの反省をもう止めよう
「周知徹底」「注意喚起」「マニュアル作成」「よく確認する」これらの言葉が出てきたら要注意である。表面上だけの反省の可能性がある。
何をいつどこでどのような頻度で誰が誰に「周知徹底」するのか、
いつ誰が誰にどのように何を「注意喚起」するのか、
何の作業のどの危険性を誰に理解してもらうために「マニュアルを作成」して、そのマニュアルをいつ誰が誰にどのような頻度で使用するのか、
いつ誰がどのように何を「よく確認」するのか。
手段を目的化させてはいけない。目的を達成するために手段がある。まずは目的を明確にする必要がある。そして、そのためには失敗を失敗学の考え方で分析することが効果的である。