湿潤養生【湿潤養生の目的】

 ○養生とは
 養生とはコンクリートの強度・耐久性・水密性等の所要の性能を確保し、有害なひび割れ等の初期欠陥を生じさせないようにするために打ち込み後一定期間適切な温度および湿度に保持するとともに振動・衝撃・荷重等の有害な作用から保護することをいう。

 

○湿潤養生とは
 湿潤養生とは打設後のコンクリートを散水や覆い等で湿潤な状態で維持し、コンクリートに水分を供給し強度の発現を促すことである。
 コンクリートが硬化する際、セメントの水和反応が完全に行われるために必要な水セメント比は22〜27%程度といわれている。したがって、理論上はコンクリート硬化のために水を補給する必要はない。しかし、コンクリートの表面が急速に乾燥すると、コンクリートの内部からも水が引き出されて十分な水和反応が得られなくなる。そのため、湿潤養生が必要となる。

 

○湿潤養生と強度・水密性
 湿潤養生をすれば長期にわたって強度が増進し、大気中に放置すれば強度増進が急激に低下し、再び湿潤状態に戻せば強度は再び増加する。また、養生期間が長くなるほど緻密なコンクリートとなるため、水密性が向上する。
 初期材齢のおける急激な乾燥は強度が発現が遅れるばかりではなく、表面ひび割れの原因になる。コンクリートの打ち込み後は直射日光や風などによる水分の逸散を防ぎ、コンクリート露出面が表面を荒らさないで作業ができる程度に硬化した後に湿潤を行う。

 

○湿潤養生の方法
・湛水養生
 湛水(たんすい)養生とは、コンクリートの表面に数cmの水を張りコンクリートを養生する方法である。

 

・散水養生
 散水養生とは、コンクリート表面に散水を行い、養生マット等で覆いコンクリートを養生する方法である。

 

・膜養生
 膜養生とは、膜養生剤をコンクリート表面に散布または塗布して表面に不透水性の膜を作り、水分の蒸発を防いでコンクリートを養生する方法である。

 

○湿潤養生期間
・コンクリート標準示方書
日平均気温
普通セメント
混合セメントB種類
早強セメント
15℃以上
5日
7日
3日
10℃以上
7日
9日
4日
5℃以上
9日
12日
5日

 

・JASS 5
計画共用期間の級→
セメントの種類↓
短期および標準
長期および超長期
早強ポルトランドセメント
3日以上
5日以上
普通ポルトランドセメント
5日以上
7日以上
中庸熱、低熱、高炉B種、
フライアッシュB種
7日以上
10日以上
 

○保温養生(温度制御養生)
 養生温度が高いほどセメントの水和反応が高いという特性を利用して、早期強度が必要なプレキャスト製品の製造時に行うことが多い。高温の蒸気の中で水和反応を促進させる蒸気養生や、高温・高圧の蒸気がまの中で高い圧力下で高温の水蒸気を用いて行うオートクレープ養生などがある。
 しかし、一般的に長期強度の伸びはコンクリート温度が低いほが大きいといわれているため、求められている品質を考慮して養生方法を選定する必要がある。