1級土木実地試験過去問考察(平成24年土工)

1級土木実地試験の過去問を考察する。
実地試験は正答が公開されていないため、参考書によって解答が異なる。
設問1
鋼矢板土留め工による掘削時の留意事項に関する次の文章の(  )に当てはまる語句を記入しなさい。
(1)掘削の進行に伴い、掘削面側と鋼矢板土留め背面側の力の不均衡が増大し、掘削底面の(  イ  )が損なわれると地盤の状況に応じた種々の減少が発生する。
( イ )の解答
参考書A:安定
参考書B:安定

【考察】
掘削面側を掘り下げるにつれて土留め壁背面側の土圧が相対的に大きくなり、許容を超えた時点で掘削底面の崩壊が生じる。
地盤条件によって生じる現象が違うので、次問以降に出てくる各現象の名前とメカニズムを理解することが重要である。
(2)透水性の大きい砂質土地盤で鋼矢板土留め壁を用いて掘削する場合は掘削の進行に伴って土留め壁背面側と掘削面側の水位差が徐々に大きくなる。この水位差のため掘削面側の地盤内に上向きの浸透圧が生じこの浸透圧が掘削面側の地盤の有効重量を超えるようになると、砂の粒子が湧きたつ状態となり、この状態を(  ロ  )という。
( ロ )の解答
参考書A:ボイリング
参考書B:ボイリング
【考察】
最も有名な底盤の崩壊現象である。
穴埋め問題ではなく記述問題で問われる可能性もあるため、説明できるようにならなければならない。
ポイントは「砂地盤」「水位差」である。
(3)沖積粘土地盤のような軟弱地盤の場合には、掘削の進行に伴って鋼矢板土留め壁背面の土の重量などにより、土留め壁背面の土が掘削底面へ回り込んで掘削底面を隆起、土留め壁のはらみ、周辺地盤の沈下が生じる。この状態を(  ハ  )という
( ハ )の解答
参考書A:ヒービング
参考書B:ヒービング
【考察】
こちらもボイリングと同じく最重要キーワードである。ボイリング・ヒービングはセットで覚える。
ポイントは「軟弱地盤」である。
イメージとしてボイリングは水が掘削底面に回ってくるが、ヒービングは軟弱地盤が掘削底面に回り込む。
(4)掘削面下に粘性土地盤や細粒分の多い砕砂層のような難透水層があり、その難透水層の下に水圧の高い透水層が存在する場合は、掘削底面に(  ニ  )が発生する。
( ニ )の解答
参考書A:盤ぶくれ
参考書B:盤ぶくれ
【考察】
盤ぶくれはヒービングと似た現象と言えるが、ヒービングは土留め背面の地盤ごと回り込んでくるイメージだが、盤ぶくれは水圧によって掘削底面の不透水層が持ち上げられるイメージである。
(5)これらの掘削底面の破壊現象に対して掘削底面の隆起状況を(  ホ  )による監視や観測井、間隙水圧計などで計測管理する。計測機器のみに頼るのではなく、日常の(  ホ  )による地表面の状態、掘削底面の状態、地下水位の湧水量などについても点検を行う。
( ホ )の解答
参考書A:目視
参考書B:巡回
【考察】
参考書AとBで解答が違うが意味としては同じである。現場をよく見て点検することが大切だということなので、どちらの解答でも正解だと考えられる。