膨張材の特徴【エトリンガイトで膨張】

○膨張材の特徴
 膨張材はセメントおよび水とともに練り混ぜた場合、水和反応によってエトリンガイト(3CaO・Al₂O₃・3CaSO₄・32H₂O)あるいは水酸化カルシウム(Ca(OH)₂)の結晶を生成して、その結晶成長あるいは生成量の増大によりモルタルまたはコンクリートを膨張させる作用を有する混和材である。

○エトリンガイト
 エトリンガイトはセメントの水和反応で生成される水和物の名称である。既設コンクリートに塩類による化学的浸食が発生したときに生成され著しく膨張したり、海洋コンクリートにおいて海水中の硫酸マグネシウムにより生成されることもある。
 膨張材によって生成されるエトリンガイトは、水和速度が調整されている。セメントと混合した際に有効な膨張が得られるように、モルタルやコンクリートの凝結終了後から水和が開始し、常温では3〜7日で終了するよう調整されている。膨張材はJIS A 6202に品質が定められている。

 

○膨張コンクリート
 膨張材を混入したコンクリートは一般に膨張コンクリートと呼ぶ。これは、コンクリートの乾燥収縮を補償し、ひび割れの低減を目的としたものである。

 

○ケミカルプレストレス
 膨張材を多量に混和してコンクリートに膨張力を生じさせ鉄筋などを拘束させプレストレスを導入することができる。これを、ケミカルプレストレスと呼ぶ。

 

○水分の供給が重要
 膨張過程におけるエトリンガイトや水酸化カルシウムの生成時には十分な水分の供給が必要である。そのため、特に材齢初期における湿潤養生が重要である。

 

○圧縮強度
 収縮補償を目的とした通常の使用量では圧縮強度は通常のコンクリートと同程度である。多量に使用した場合は、自由膨張させると圧縮強度が低下する。膨張を拘束した場合には強度は低下しない。

 

○保管方法に注意
 膨張材はセメントと比べると風化しやすいため、保管に注意が必要である。風化すると膨張性能が低下する。