コンクリートの運搬【JIS・JASS・標準示方書を比較】

○コンクリートの運搬の概要
 運搬中に生じるコンクリートの品質変化は材料分離・スランプの低下・空気量の低下・ワーカビリティーの低下がある。スランプは練り混ぜから時間の経過に伴って低下する。空気量は時間と共に不安定な空気泡が消えるので、1時間で0.5〜1%ほど低下する。ワーカビリティーの低下はスランプや空気量の変化、セメントの水和反応の進行などに伴って生じる。ワーカビリティが低下したコンクリートは打ち込み後の締め固めが不十分となりやすく、硬化したコンクリートの一部に粗骨材だけが集まって出来た空げきやコールドジョンとなどの不具合の発生につながる。
 

○運搬時間の限度
 JIS A 5308(日本工業規格)、コンクリート標準示方書、JASS 5(建築工事標準仕様書)にそれぞれ定められている。
 JISではコンクリートの練り混ぜから『荷卸し地点到着』までを1.5時間と定めている。荷卸し地点到着時間とは、生コン車が現場に到着した時間であり現場での待機時間は含まれない。
 コンクリート標準示方書とJASSではコンクリート練り混ぜ開始から打ち込み終了までの時間を定めている。
・コンクリート標準示方書
外気温が25℃を超える時
1.5時間
外気温が25℃以下の時
2.0時間
・JASS 5
外気温が25℃以上
90分
外気温が25℃未満
120分
 温度が25℃を「超える時」と「以上」、「以下」と「未満」の違いはあるが、他は同じである。JIS A 5308、コンクリート標準示方書、JASS 5それぞれの基準を全て遵守する場合の管理項目としては
・温度は関係なく、練り混ぜから現場到着までは1.5時間以内
・外気温が25℃以上の場合は練り混ぜから打ち込み終了まで1.5時間以内
・外気温が25℃未満の場合は練り混ぜから打ち込み終了まで2.0時間以内
となる。

 

○トラックアジテーター
 トラックアジテーターは「生コン車」「アジテータ車」とも呼ばれる。求められる機能として
・運搬中にはコンクリートの均質性を保持する。
・荷卸し時には材料分離を起こさず、容易にかつ完全に排出できるもの
とされている。
 JISでは「排出時にコンクリート流の約1/4〜3/4のときのそれぞれの全断面から試料を採取してスランプ試験を行い、両者のスランプの差が3㎝以内となるような攪拌性能を持つものでなければならない」と規定している。

 

○ダンプトラック
 舗装用のコンクリートなど硬練コンクリートを運搬する場合に使用する。
・ダンプトラックの荷台は平滑で防水機能を持つものでなければならない
・運搬中の乾燥防止や風雨に対する保護のための覆いが必要である
・JISではダンプトラックでコンクリートを運搬する場合は運搬時間の限度を60分以内と定めている