ピーク・エンドの法則【記憶の評価方法】

○ピーク・エンドの法則とは
ピーク・エンドの法則とは、記憶に基づく評価はピーク時と終了時の苦痛の平均でほとんど決まるという法則である。

○ピーク・エンドの法則の具体例
ある病気の治療を例にする。この病気は治療方法が2つあり、それぞの苦痛の度合いを10点満点(10点だと苦痛が最大)で評価すると以下のようになる。
治療方法A:初期(4点)、中盤(7点)、終盤(2点)
治療方法B:初期(1点)、中盤(7点)、終盤(4点)
この2つの治療法のうち、どちらが患者が感じる苦痛が少ないかを考える時に活躍するのがピーク・エンドの法則の例である。数字で考えると、治療方法Bの方が苦痛は少ない。最大の苦痛はどちらも7点で同じ、点数の合計はAが13点であるのに対し、Bは12点である。
しかし、実験結果によると、治療Bのほうが苦痛であると答える患者が増える。記憶に基づく評価は、「ピーク時」と「終了時」の平均点数で決まるためである。治療法Aはピーク時が7点、終了時が2点で平均4.5点。治療法Bはピーク時が7点、終了時が4点で平均5.5点となる。

○経験と記憶
「経験する自分」と「記憶する自分」という2つの自分がいる。「今痛いですか?」という問いに答えるのが「経験する自分」、治療後に「治療全体としてどうでしたか?」という問いに答えるのが「記憶する自分」である。過去の出来事を評価するのは「記憶する自分」である。そして、「記憶する自分」の思考プロセスは、ピーク・エンドの法則に従う。

○人生の評価
 人生を評価する時にはピーク・エンドの法則が適用されることが多い。人生は素晴らしい物語である。そして、物語はハッピーエンドが好まれる。これは、ピーク・エンドの法則の「エンド」部分の特徴を反映した結果である。
 離婚した時にどのように感じるかを考える。離婚をすると今までの婚姻生活全てを否定したい気になる。しかし、離婚を考え始めるまでは幸せな結婚生活を過ごしていたはずである。仮に結婚10年目で離婚をしたとして、最後の3年間に問題があって離婚に至ったとする。そうすると7年間は幸せで3年間が不幸せだったということになる。幸せと不幸せの割合を7:3と考えると、それなりに幸せな結婚生活だったと言えそうである。しかし、我々はそのようには考えない。最後の不幸せな3年間にフォーカスし、10年間全てが不幸せだったと判断してしまう。