自然電位法【鉄筋からコンクリートへ電流を少しだけ流す】

○自然電位法とは
 自然電位法とは、鋼材が腐食することによって変化する鋼材表面の電位から、鋼材腐食を診断しようとする電気化学的方法である。

○原理
 自然電位法は腐食過程のアノード部の電荷を検出し、鋼材の腐食推定を行う。
 鋼材の腐食はアノード反応によって生じる。アノード反応は下記の式で表される。
  Fe=Fe2++2e- 鉄=鉄イオン+電子
 鋼材が腐食しているアノード部はアノード反応によって電子が発生するため、アノード部の電位は(ー)側(卑側)に変化することが多い。自然電位法では、この負の電荷を検出する。

 

○対象
 自然電位法は大気中にあるコンクリート構造物中の鉄筋などの鋼材が腐食環境にあるかどうかを診断する。調査時点での腐食の可能性について診断するものであり、コンクリート構造物が腐食劣化する初期の段階での診断に有効である。

 

○測定手順
 複数の露出鋼材間で電気的導通を確認する
  ↓
 コンクリート表面を水道水などの清潔な水を噴霧し、湿潤状態を保つ
  ↓
 電位差計の+端子を鋼材に接続する
 電位差計のー端子を電極に接続する
 電極の先端には含水下スポンジ等を巻き付ける
  ↓
 測定するコンクリート面スポンジ等を当てて保持し、電極を設置する
  ↓
 電位差計で自然電位を測定し、記録する

 

○入力抵抗が大きい直流電流計を用いる
 計測時に流れる電流が大きいと鉄筋の腐食を促進させる可能性があるため、電位差計は電流をできるだけ流さずに電位差を測るのが望ましい。そのため、入力抵抗が100Ω以上と大きく分解能が1mv以下の直流電流計を用いる。

 

○コンクリート表面は湿潤状態に保つ
 コンクリート表面が乾燥していると電気的に絶縁に近くなるので、コンクリートは湿潤状態で測定を行う。

 

○鉄筋腐食が開始すると、電位Eが卑側(−)側に増大する
 アノード反応により、鉄筋腐食が開始すると電位が卑側(−)側に増大する。腐食反応が継続すると、電位は卑側(−)側を維持する。

 

○電気的に絶縁体に近い場合は測定できない
 コンクリート表面に塗装等の絶縁材料が被覆されているような場合には適用できない。また、鉄筋にエポキシ樹脂塗装鉄筋や亜鉛めっき鉄筋等の表面がコーティング鉄筋を用いている場合も適用できない。