必須科目過去問の解説と考察【建設部門H28-9】

技術士第二次試験建設部門の必須科目の解説・考察を行う。
平成28年度技術士第二次試験問題【建設部門】
9.防災に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 平成27年の「活動火山対策特別措置法」改正により、従来講じられていた避難施設の整備等のハード対策に代わって、警戒避難態勢の警備等のソフト対策によって、活動火山対策を進めることとなった。
  2. 平成27年の「水防法」改正により、国土交通大臣及び都道府県知事は、それぞれ指定した河川について、想定最大規模降雨により当該河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を洪水浸水想定区域として指定することとなった。
  3. 平成27年に中央防災会議の下でまとめられた「総合的な土砂災害対策の推進について(報告)」では、住民等により適時適切な避難行動として、指定緊急避難場所への移動だけではなく、屋内における安全確保も避難の一形態であるとしている。
  4. 平成26年に閣議決定された「首都直下地震緊急対策推進基本計画」では、首都直下地震に関して、予防対策及び円滑かつ迅速な応急対策を講ずることにより、人的・物的被害は大きく減少させることができるとしている。
  5. 平成27年に変更された「海岸保全区域等に係る海岸の保全に関する基本的な方針」では、海岸保全施設の整備に関し設計の対象を超える津波、高潮等の作用に対して施設の損傷等を軽減するため、粘り強い構造の堤防等の整備を推進することとしている。

○解答と解説
 最も不適切なものは[1]である。ハード対策に「代わって」ではなく、「加えて」が正答である。
 平成26年9月27日、御嶽山において噴火が発生し、火口周辺で多数の死者・負傷者が出るなど甚大な被害が発生した。この噴火災害からは、噴火の兆候となる火山現象の変化をいち早く捉え、伝達することが重要であること、住民のみならず、登山者も対象とした警戒避難体制の整備が必要であり、このためには、専門的知見を取り入れた火山ごとの検討が必要不可欠であることなど、火山防災対策に関する様々な課題が改めて認識された。
 御嶽山(おんたけさん)は日本の山の標高順で14位の山であり、火山としては富士山に次いで2番目に標高が高い山である。
・活動火山対策特別措置法
(目的)
第一条  この法律は、火山の爆発その他の火山現象により著しい被害を受け、又は受けるおそれがあると認められる地域等について、活動火山対策の総合的な推進に関する基本的な指針を策定するとともに、警戒避難体制の整備を図るほか、避難施設、防災営農施設等の整備及び降灰除去事業の実施を促進する等特別の措置を講じ、もつて当該地域における住民、登山者その他の者(以下「住民等」という。)の生命及び身体の安全並びに住民の生活及び農林漁業、中小企業等の経営の安定を図ることを目的とする。
○その他のキーワード
・水防法
(目的)
第一条  この法律は、洪水、雨水出水、津波又は高潮に際し、水災を警戒し、防御し、及びこれによる被害を軽減し、もつて公共の安全を保持することを目的とする。
・総合的な土砂災害対策の推進について
  平成26年8月に発生した広島市の土砂災害等を教訓とし、昨今の局所的豪雨の発生状況を踏まえ、国土強靭化推進の観点も含め、土砂災害に対する脆弱性を検証するとともに、人命の保護や重要な機能の維持のための方策の強化に向けた総合的な対応策を検討するために本ワーキンググループを設置した。
住民等による適時適切な避難行動として
  1. 指定緊急避難場所の確認等
  2. 指定緊急避難場所の迅速かつ確実な解説
  3. 適時適切な避難行動を促すための仕組みづくり
  4. 防災教育の充実、人材の育成
  5. 自主防災組織の重要性
が挙げられている。
・首都直下地震緊急対策推進基本計画
  首都直下地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的として、首都直下地震対策特別措置法が制定され、同年12月に施行された。本計画は、法第4条に規定する「首都直下地震に係る地震防災上緊急に講ずべき対策の推進に関する基本的な計画」として、首都中枢機能の維持を始めとする首都直下地震に関する施策の基本的な事項を定めることにより、円滑かつ迅速な首都直下地震対策を図ることを目的とするものである。
・海岸保全区域等に係る海岸の保全に関する基本的な方針
 国民共有の財産として「美しく、安全で、いきいきした海岸」を次世代へ継承していくことを今後の海岸の保全のための基本的な理念とする。
海岸法に下記のように定められている。
(海岸保全基本方針)
第二条の二  主務大臣は、政令で定めるところにより、海岸保全区域等に係る海岸の保全に関する基本的な方針(以下「海岸保全基本方針」という。)を定めなければならない。