技術士第二次試験建設部門の記述式問題の考察を行う。今回は「0902 鋼構造及びコンクリート部門」の「コンクリート」問2−2についてである。
○考察結果
各年度で出題されたテーマは以下のとおりである。問2-1と同じような傾向であり、補修や劣化についての出題が多い。問2-2では「原因」⇒「対策・手順」⇒「留意点」の流れで解答する問題が出題されており、受験者がその業務を担当したらどのように遂行するのかを問われている。
平成28年
・リスク(強度不足)
・補強、合成・複合構造
平成27年
・補修、耐震設計
・はく離・はく落
平成26年
・劣化損傷
・プレキャスト
平成25年
・施工
・補強設計
以下、過去問を記載する。
○過去問
問2-2.次の2設問のうち1設問を選び解答せよ。
【平成28年度】
・問2-2-3 ⇒リスク(強度不足)
コンクリート工事におけるリスク管理を行う上で、想定されるリスクに対するリスク分析や危機回避シナリオの作成など、事前の活動が危機回避の上で有効な手段である。今回あなたが関係する建設現場において、管理用供試体の圧縮強度に強度不足が発生したことを想定し、下記の内容について記述せよ。
(1)対象となるコンクリート構造物を仮定し、想定した強度不足の発生状況とその原因や問題点
(2)自分の立場と業務を明確にし、発生原因を回避するための再発防止策とその内容
(3)再発防止策を進めるに当たり留意すべき事項
・問2-2-4 ⇒補強、合成・複合構造
供用中のコンクリート構造物において、作用荷重の増大又は外的作用力に起因すると考えられる損傷が発見され、耐荷力の回復又は耐荷力の向上を目的として早期に補強する業務を行うことになった。この業務を担当するに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)想定したコンクリート構造物とその損傷状況を示し、損傷状態の把握、補強対策のために調査すべき項目
(2)調査から補強対策実施までの業務手順とその内容。ただし、補強は当該コンクリート構造物を複合構造がして行うものとする。
(3)複合構造化に当たり設計・施工上留意すべき事項
【平成27年度】
・問2-2-3 ⇒補修、耐震設計
既設のコンクリート構造物を活用し、亜新たに部材や構造物を増設又は増築して一体化する改修工事の設計に取り組むことになった。このような事例として、耐震設計が必要な既設コンクリート構造物の工事計画を1つ想定して、この業務を遂行するに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)想定した工事計画と耐震設計を行うために調査すべき項目
(2)耐震設計に関する業務手順とその内容
(3)合理的な耐震設計とするために留意すべき事項
・問2-2-4 ⇒はく離・はく落
経年劣化によるかぶりコンクリートのはく離・はく落で鉄筋が露出したコンクリート構造物において、補修対策を行うものとして、以下の問いに答えよ。
(1)はく離・はく落の原因として考えられるものを2つ挙げ、それぞれについて原因の特定と補修対策を行うために調査すべき内容を記述せよ。
(2)調査から対策実施までの業務手順とその内容を記述せよ。
(3)業務を進める際に留意すべき事項を記述せよ。
【平成26年度】
・問2-2-3 ⇒劣化損傷
コンクリート構造物の劣化損傷は耐荷力低下等の安全性を損なう場合がある。このような事例として、コンクリート構造の梁部材において、ひび割れから錆汁が確認され、引張鋼材の腐食が懸念される状況を想定し、下記の内容について記述せよ。
(1)想定するコンクリート構造物を示し、耐荷力の確認を行うために調査すべき内容
(2)想定したコンクリート構造物において、耐荷力の低下レベルを複数想定し、長期的な安全性・共用性に配慮しつつ、損傷発見後から対策実施までに行うべき業務手順とその内容。ただし、更新は含まない。
(3)業務を進める際に留意すべき事項
・問2-2-4 ⇒プレキャスト
設計が完了しているコンクリート構造物において、施工に着手する段階で施工工期を短縮する必要から、主要な構造部材のプレキャスト化に取り組むことになった。しかしながら、プレキャスト化においては在来工法時に比べて検討すべき項目が多く存在する。この業務を遂行するに当たり、コンクリート構造物を1つ想定して、下記内容について記述せよ。
(1)工期短縮のために想定した構造物のプレキャスト化の範囲と、プレキャスト化計画時に検討すべき事項
(2)「設計者」もしくは「施工者」の立場から業務を進める手順とその内容
(3)(2)で解答した立場において、業務を進める際に留意すべき事項
【平成25年度】
・問2-2-3 ⇒施工
社会資本であるコンクリート構造物の長寿命化を図るためには、施工時の初期欠陥を防止することが極めて重要である。夏季は施工時の初期欠陥が起こりやすく、特に注意が必要である。こうした状況において、夏季に、高密度配筋となる柱とはりの接合部の施工を行うこととなった。この業務を担当して、コンクリートの製造・運搬、打ち込み・締め固めを行うに当たり、施工時の初期欠陥を防止することを念頭にして下記内容について記述せよ。
(1)計画段階で検討すべき事項
(2)業務を進める手順
(3)以下のうち、いずれかの業務を進める際に留意すべき事項
「コンクリートの製造・運搬」あるいは「打ち込み・締め固め」
・問2-2-4 ⇒補強設計
既設構造物の中には、材料劣化は生じていないが、既存不適格であるものが存在する。このような構造物の適切な補強設計を行うためには、詳細な情報が必要となるが、建設後数十年を超える構造物では設計図書(図面・計算書等)が残っていない場合がある、こうした状況において、設計図書のないコンクリート構造物の耐荷又は耐震のいずれかの補強設計を行うこととなった。この業務を担当者として進めるに当たり、既存不適格である構造物を1つ想定し、下記の内容について記述せよ。
(1)業務を行うに当たって調査すべき事項
(2)構造物の現状の性能評価と補強設計の手順
(3)合理的な補強設計とするために留意すべき事項