塩害・中性化によるコンクリートの劣化(1級土木実地試験編+α)

 1級土木施工管理技士の実地試験に必要なコンクリートの劣化のうちの「塩害」「中性化」についてまとめる。理解を助けるために、1級土木試験レベル以上の項目についても多少記述する。「アルカリシリカ反応」「化学的侵食」「凍害」については後日記載する。
1.塩害
 塩害とはコンクリート中の鋼材の腐食が塩化物イオンによって促進され、コンクリートのひび割れや剥離、鋼材の断面現象を引き起こす現象である。
原因物質はコンクリート中の「塩化物イオン」である。対策として塩化物イオン量を抑制する必要があり、原則として塩化物イオンの総量は0.3kg/㎥以下とされているが、やむを得ない場合は購入者の承認を得て0.6kg/㎥以下とすることができる。
 (ここから+α)

 塩害はコンクリート中の塩化物イオンの作用により鉄筋の腐食が進行し、膨張圧によって鉄筋に沿ってコンクリートにひび割れや剥離が発生する。
 品質の良いコンクリートはpHが12以上と高アルカリ性を示し、コンクリート中の鉄筋の表面に不動態皮膜ができるので鋼材は腐食しない。(不動態皮膜とは鋼材を腐食から保護する薄い膜)ところが、コンクリート中に塩化物イオンが一定量以上存在すると鉄筋の不動態皮膜が部分的に破壊され、電気化学的な腐食により鋼材腐食が進行する。
 塩化物イオンには2種類ある。内存塩化物イオンと外来塩化物イオンである。内存塩化物イオンはコンクリートの材料である砂やセメント、水などに最初から含まれている分である。一方外来塩化物イオンは海水や凍結防止材などがコンクリート表面から内部に侵入してくる分である。
 海洋環境におけるコンクリート中の鉄筋の腐食に対する厳しさは
 飛沫帯(ひまつ帯)>海上大気中>海中 (飛沫とは水しぶき)
である。これは、海水の他に水と酸素も影響しているからである。
2.中性化
 中性化とは二酸化炭素がセメントと炭酸化反応を起こしPHを低下させることで鋼材の腐食が促進され、コンクリートのひび割れや剥離、鋼材の断面現象を引き起こす現象である。原因物質は大気中に存在する「二酸化炭素」であり、対策としては「緻密なコンクリートにし二酸化炭素の侵入を防ぐ」「かぶりを大きくする」などがある。
 (ここから+α)
 健全なコンクリートはpH12.5程度だが、二酸化炭素がコンクリート中に侵入し中性化が進行するとコンクリートのpHが10程度に低下する。コンクリート内の鉄筋はpHが12以上であれば安定しているが、pH11以下になると腐食が生じる。腐食の過程は上記の塩害と同様である。鉄筋表面の不動態皮膜が破壊され鉄筋が腐食し膨張する。膨張圧によってコンクリートのひび割れや剥離が発生する。
 中性化の環境条件として温度・湿度・二酸化炭素濃度が挙げられる。温度は高い方が中性化の進行が早く、湿度は40〜60%で進行が最も早くなる。二酸化炭素濃度は高いほど中性化が早く進行するため、屋外よりも屋内の方が中性化の進行は早い。中性化深さは大気に接している期間の平方根に比例すると言われている。
 中性化の判定にはフェノールフタレインを使用する。健全なアルカリ性のコンクリートに吹きかけると赤紫色に変色するが、中性化によりpHが下がっていると変色しない。