○水酸化カルシウム[Ca(OH)₂]
水酸化カルシウムはけい酸カルシウム水和物と並び、水和反応で生成される主な成分の1つである。水酸化カルシウムはコンクリートをアルカリ性に保つ役割がある。
○ポゾラン活性
フライアッシュに含まれる二酸化ケイ素[SiO₂]が水酸化カルシウム[Ca(OH)₂]と常温で徐々に化合して、不溶性の安定なけい酸カルシウム水和物[CaO・SiO₂・H₂O]を生成する。この性質をポゾラン活性という。
ポゾラン反応で水酸化カルシウムを消費するため、フライアッシュを用いたコンクリートは中性化の進行が早い。
○エフロレッセンス
セメント中の水酸化カルシウムがコンクリート表面に溶出されるとエフロレッセンスとなるが、溶出の過程で空気中の二酸化炭素と反応し炭酸カルシウムとして生成される。
○中性化
コンクリート中の水酸化カルシウム[Ca(OH)₂]が徐々に炭酸カルシウム[CaCO₃]になり、コンクリートのアルカリ性が低下する現象。
○硫酸による化学的浸食
水酸化カルシウム[Ca(OH)₂]は硫酸[H₂SO₄]と反応してせっこう[CaSO₄]を生成し、コンクリートの中性化が進行する。
○塩類による化学的浸食
ナトリウムなどのアルカリ硫酸塩が水酸化カルシウム[Ca(OH)₂]と反応すると二水せっこうを生成する。生成された二水石こう[CaSo₄・2H₂O]はセメント中のアルミン酸三カルシウム[C₃A]と反応してエトリンガイトを生成して、著しい膨張を起こす。
○浸食性炭酸による化学的浸食
炭酸[H₂CO₃]と水酸化カルシウム[Ca(OH)₂]が反応して難溶性の炭酸カルシウム[CaCO₃]が生成される。
その後、濃度が高くなると炭酸カルシウム[CaCO₃]と二酸化炭素[CO₂]と水[H₂O]が反応し、炭酸水素カルシウム[Ca(HCO₃)₂]となり炭酸化が促進されコンクリートの浸食が進行する。
○糖類による化学的浸食
糖類はコンクリート中の水酸化カルシウムと反応して可溶性の糖酸カルシウムを生成し、その溶出により組織を多孔化し劣化させる。
○風化(水酸化カルシウムの溶出)
水と接するコンクリートの表面から水酸化カルシウムが溶出し、コンクリートが中性化して劣化する。
1.液層の水酸化カルシウムが溶解
2.固体の水酸化カルシウムが溶解
3.固体の水酸化カルシウムが溶解すると、ケイ酸カルシウム水和物[C-S-H]が溶解
4.C-S-H中のCaOが溶出し、Ca/Si比が低下しコンクリートが弱体化
○火害
コンクリートは500〜580℃程度の加熱を受けると水酸化カルシウムが熱分解し、中性化する。
○示差熱量分析
コンクリート微粉末試料を常温から1000℃程度まで定速で昇温し、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム量を把握するものである。中性化の判定に用いる。断面を連続的に測定できないという欠点があるが、精度は良好でありフェノールフタレイン法の補足として使用する。
○脱塩工法
コンクリート表面に水酸化カルシウムやホウ酸リチウムなどの電解質溶液を含んだ陽極材を約8週間程度設置し、コンクリート中の鋼材に向かって直流電流を流す。コンクリート中の塩化物イオンをコンクリート外に電気泳動し脱塩する。
○表面含浸工法
けい酸塩系含浸剤は、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応してけい酸カルシウム水和生成物[C-S-H]を生成し、コンクリートの空隙を充填する。
○回収水
回収水に含まれるアルカリ成分は水酸化カルシウムによるものである。