化学的浸食のメカニズム【結局ほとんど酸が原因】

○化学的浸食とは
 コンクリートが外部からの化学的作用を受け、その結果としてセメント硬化体を構成する水和生成物が変質あるいは分解して総合能力を失っていく劣化現象を総称して化学的浸食という。

○酸による化学的浸食
 酸による化学的浸食の特徴は、浸食が表面から徐々に内部へ向かって進行していくことである。まず、表層部のセメント硬化体が軟化すると表層のセメント硬化体が結合能力を失い脱落する。続いて、表層部のセメント硬化体のみが洗われたような状態にとなり骨材が露出する。更に浸食が進行すると、骨材を取り囲む部分のセメント硬化体が脆弱化し、骨材を保持できなくなるため骨材の欠落が生じる。これらの繰り返しによってコンクリート浸食が進行する。
 酸による化学的浸食において、浸食の程度を左右する大きな要因の1つは酸の強さである。応益の水素イオン濃度が一定であれば浸食は時間の平方根に比例して進行する。
x:反応部分の厚さ
t:時間
K:速度定数 とすると
 x=K√t
となる

 

○アルカリによる化学的浸食
 コンクリートはそれ自体が強アルカリなため、アルカリに対する抵抗力は通常かなり強い。しかし、非常に濃度の高いNaOH(水酸化ナトリウム)には浸食される。特に、乾湿繰り返しのある場合には劣化が激しい。

 

○塩類による化学的浸食
 塩類により化学的浸食の代表的なものは、硫酸塩による化学的浸食である。ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの硫酸塩がセメント中の水酸化カルシウムと反応してエトリンガイトを生成して著しい膨張を引き起こす。

 

○油類による化学的浸食
 酸性物質を含まない鉱物油はコンクリートを浸食しない。動植物油のように多くの遊離脂肪酸を含有する場合は、酸による化学的浸食が発生する。

 

○腐食性ガスによる化学的浸食
 コンクリートに化学的浸食をもたらす気体は塩化水素・フッ化水素・硫化水素・二酸化硫黄などがある。多くの気体は水に
融解して酸を生成し、コンクリートを侵食する。硫化水素は水に融解して酸を生成する場合と、コンクリートのカルシウム化合物と反応して易溶性のカルシウム塩を生成して浸食する場合がある。