○火災によるひび割れ
コンクリート中のセメント硬化体と骨材は熱に対してそれぞれ異なった膨張収縮挙動を示す。約600℃まではセメントペーストは収縮するが、骨材は膨張する。それによって火災を受けたコンクリートの組織は緩み、熱応力によりひび割れが発生し劣化する。
火災によって新しく生じたひび割れにはすすが付着しないため、ひび割れが火災によるものか否かは目視により判断できる。
○加熱による圧縮強度・弾性係数への影響
加熱による圧縮強度の低下は300℃まではそれほど大きくないが、300℃を超えると低下が大きくなり500℃で常温のほぼ50%程度になる。弾性係数は圧縮強度よりも受熱による影響が著しく、500℃まで直線的に低下する。
比較的低強度のコンクリートの圧縮強度は、加熱後ある期間を経ると受熱温度が500℃以内であれば再使用に耐えられる状態まで回復する。しかし、高強度コンクリートについては300℃を超えたと推測される場合は対象部位からコアを採取してコンクリートの強度を確認することが推奨されている。弾性係数もある程度は回復するが、回復の度合いは小さい。
○加熱温度と鉄筋
鉄筋は加熱温度が500℃以下であればほぼ強度が回復するため、500℃が再使用可能温度と考えることが出来る。PC鋼材の場合は300℃を超えると機械的性質の低下を生じるものがある。
○加熱による中性化
コンクリートは500~580℃の加熱でコンクリート中の遊離アルカリ分である水酸化カルシウムが熱分解し、中性化が発生する。
○コンクリートの爆裂
コンクリートの爆裂とは、火災初期に表面層のコンクリートの剥落が生じて鉄筋が露出する現象である。組織が緻密なコンクリートであるほど生じやすい。コンクリートの爆裂の原因は下記の通りである。
- 温度上昇によるコンクリート中の骨材自身の化学的性質の変化
- コンクリート中の毛細間隙内の自由水の水蒸気圧の増大
- コンクリート中のセメントペースト部と骨材の加熱による相反する挙動
- コンクリート中と鉄筋間の一様でない膨張のために生ずる拘束応力の増大
- コンクリート内部における昇温温度の違いによって生じる内部熱応力の増大
- 骨材の急激な熱膨張
○コンクリートの変色と受熱温度の関係
変色状況
|
温度範囲(℃)
|
表面にすすが付着
|
300未満
|
ピンク色
|
300~600
|
灰白色
|
600~950
|
淡黄色
|
950~1200
|
溶融する
|
1200以上
|