残存膨張量【JCI-DD2法、デンマーク法、カナダ法】

○残存膨張量とは
 アルカリシリカ反応の恐れがある構造物は、今後どの程度膨張するかを推測する必要がある。この、「今後どの程度膨張するか」が残存膨張量である。
 対象構造物からコアを採取し膨張促進試験を行い、膨張量を測定する。この測定結果を残存膨張量の目安とする。

 

○促進養生試験の種類
・JCI-DD2法
・デンマーク法
・カナダ法

 

○コアの採取
 対象構造物からコアを採取する際は、ひび割れなどが発生している箇所は避けて採取する。採取したコアは、乾燥や炭酸化の影響を受けないように現地で直ちに密封する。構造物の表面から50mm程度の範囲はひび割れや中性化当の影響を受けているので、促進試験には使用しない。
 コアの寸法はJCI-DD2法の「アルカリ骨材反応を生じたコンクリート構造物のコア試料による膨張率の測定方法(案)」によると「コアは原則として直径100mm、長さ約250mmとする」と規定されている。しかし、実際は鉄筋等によりこの大きさのコアを確保することは困難である。そのような場合は、直径75mmや50mmのコアが使用される。いずれの場合でもコアの長さは、コアの直径の2倍以上を確保することが望ましい。

 

○JCI-DD2法
 温度(気温)40℃、湿度95%以上の湿気箱で養生を行い、膨張量を測定する。判定基準は、省庁によって若干差があるが試験材齢3ヶ月の膨張率が0.05%を超えると「有害」と判定する。
 JCI-DD2法では、供試体のコア直径が小さいと含有アルカリが溶脱して膨張しないことがあるので、コア直径は100mm以上を原則とする。遅延膨張性のアルカリシリカ反応には対応できない場合があるので注意する。

 

○デンマーク法
 温度50℃の飽和塩化ナトリウム(NaCl)水溶液中に浸して養生を行い、膨張量を測定する。試験材齢3ヶ月での膨張率で判定する。0.4%以上を「膨張性あり」、0.1〜0.4%は「不明瞭」、0.1%未満は「膨張性なし」と判定する。
 コアの直径が大きくなると、アルカリが浸透せず測定結果が小さくなる場合がある。

 

○カナダ法
 温度80℃の1mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に浸して養生を行う。試験材齢14日での膨張率で判定する。0.20%以上を「潜在的に有害な膨張率」、0.10〜0.20%を「有害と無害な骨材が含まれる」、0.10%未満の場合「無害」と判定する。なお、「有害と無害な骨材が含まれる」と判定された場合は、14日間を超えて試験を継続する。
 判定結果が早く出るのが最大の特徴である。コアの直径が大きくなると、アルカリが浸透せず測定結果が小さくなる場合がある。直径50mmのコアで試験を行うことが多い。アルカリを供給する養生試験のため、過大評価となる場合がある。試験費がJCI-DD2法の2倍ほどかかる。

 

○測定結果と現物との差
 まず、構造物からコアは採取する時点で応力解放の影響や削孔水の影響を受けている。また、残存膨張量はあくまでも促進環境下における試験結果であり、現実の環境下における膨張量ではない。実際の構造物は鋼材による拘束の影響を受ける。