塩害の調査【可溶性と全塩化物】

○可溶性塩化物イオン量と全塩化物イオン量
・可溶性塩化物イオン量とは
 コンクリートの水分中を動きやすい塩化物イオン量である。可溶性なのでコンクリート中で鋼材付近へ移動し、鋼材腐食に関与しやすい塩化物イオンと言える。分析を行う際は試料を50℃に暖め、50℃の湯水を加え保存し、30分間振とうして可溶性塩化物イオンを抽出する。

・全塩化物イオン量とは
 硬化コンクリート中にあらゆる形で含まれる塩化物イオンの全量である。分析を行う際は酢酸1に対して水6を加えたpH3以下の溶液で加熱煮沸して全塩化物イオンを抽出する。

 

○試料採取時の留意点
・塩化物イオンの分布を調べるために、構造物のどこから試料を採取したかを正確に記録する。
・塩化物イオンの流出を防ぐため、乾式の試料採取方法が望ましい。
・採取した試料に関しても塩化物イオンの流出を防ぐために水中養生は行わない。
・中性化部分では塩化物イオン濃度が濃く出るので、中性化深さ+1㎝は試料として使用しない。

 

○塩化物イオン量の測定方法
・重量法(塩化銀沈殿法)
 塩化物イオンが銀イオンと反応して生じる塩化銀(沈殿物)の重量を測定して塩化物イオン量を産出する方法である。
 Ag++CL=AgCl

 

・容積法(モール法)
  クロム酸イオンの存在下で塩化物イオンの濃度が未知である水溶液に硝酸銀水溶液を滴下して塩化銀を沈殿させる。加えた硝酸銀水溶液の体積から塩化物イオンの濃度を求める方法である。塩化物イオンが塩化銀として完全に沈下した後続けて滴下すると赤褐色のクロム酸銀が生じ、この段階で滴下を終了する。

 

・電気化学的方法(電位差滴定法)
 反応そのものは上記容積法と同様である。反応の終了時点で被測定液の特性に変化が生じるのを電極電位の測定から把握する方法である。

 

○塩害の判定
・潜伏期
 鋼材の腐食が開始するまでの期間
・進展期
 鋼材の腐食開始から腐食ひび割れ発生までの期間
・加速期
 腐食ひび割れ発生により腐食速度が増大する期間
・劣化期
 腐食量の増加により耐力の低下が顕著な期間

 

○腐食発生限界塩化物イオン濃度
 多くの実験や調査により1.2〜2.5kg/m³程度とされている。2007年制定版のコンクリート標準示方書までは鋼材腐食発錆限界濃度を1.2kg/m³としてよいとみなしてきた。このため、土木構造物の維持管理においてはこの値が参考にされている場合が多い。「コンクリート橋の塩害に関する特定点検要項(案)」では鋼材位置での全塩化物イオン量が1.2kg/m³に達しないように維持管理を行っていくことを基本としている。
 しかし、腐食発生限界塩化物イオン濃度はコンクリートの使用材料や配(調)合、含水状態に影響されるため、対象構造物における点検結果に基づき腐食発生限界塩化物イオン濃度を設定することが望ましい。
 また、コンクリートの配合ごとの腐食発生限界塩化物イオン濃度の推定に下記の式を参考にする方法もある。

 

   Clim:腐食発生限界塩化物イオン濃度(kg//m³)
   W/C:水セメント比 (0.3<W/C<0.55)
  として
・普通ポルトランドセメント
 Clim=-3.0(W/C)+3.4
・高炉セメントB種、フライアッシュB種
 Clim=-2.6(W/C)+3.1
・低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント
 Clim=-2.2(W/C)+2.6
・シリカフューム
 Clim=1.2

 

○塩害への対応
 コンクリート中の鋼材の腐食反応を停止させることを目的とした工法である。コンクリート表面に陽極材を設置し、コンクリートを介して鋼材に防食電流を供給することにより鋼材のアノード反応を停止させる。

 

・脱塩工法
 コンクリート中の塩化物イオンの除去および鋼材の不動態化を目的とする。コンクリート表面に水酸化カルシウムやホウ酸リチウムなどの電解質溶液を含んだ仮設陽極材を約8週間程度設置した後、電気防食工法よりも大きな直流電流をコンクリートに向かって流す。電気を流すことによりコンクリート中の塩化物イオンをコンクリート外へ電気泳動させ脱塩する。

 

・断面修復工法
 劣化因子を含むコンクリートを除去・修復する工法である。

 

・表面被覆工法
 コンクリート表面を被覆して劣化因子の侵入を抑制する工法である。塩害の抑制を目的とする場合は「防水性」「柔軟性」「遮塩性」が求められる。