サーモグラフィー法【欠陥部は熱しやすく冷めやすい】

○概要
 サーモグラフィ法とは物体表面から放射される赤外線を映像として表示し、温度変化を調べることによりコンクリートのひび割れ•剥離等の欠陥を調べる方法である。非破壊検査の1つである。大断面を迅速に調査できるという特徴がある。

○適用対象
1.壁仕上げ材の浮き(剥離)調査
2.吹付のり面の老朽化調査
3.橋梁床版のコンクリート浮き(剥離)調査
4.トンネル覆工コンクリートの浮き(剥離)調査
5.連続繊維補強材の施工不良調査
6.各種構造物の漏水調査
7.住宅の断熱性能評価

 

○原理
 絶対零度以上の全ての物体はその表面から赤外線を放射している。この赤外線の量及び波長は物体の表面温度および放射率によって決まるため、赤外線センサーを用いて放射する赤外線を測定することで表面温度を知ることができる。
 コンクリートの内部に空隙がある場合、その空隙が断熱層となり温度変化が周囲と異なる挙動を示す。コンクリート内部に空隙があると表面から伝わる熱が空隙部で断熱されるため、熱が奥まで伝わらず表面の温度が上がりやくなる。また、コンクリートの温度が下がる場合は空隙部で断熱されるため、健全部に比べると温度に対してコンクリート内の熱量が少ないため温度の降下が速くなる。

 

○調査方法
 対象物にできるだけ正対した位置から適切な距離をおいて測定する。測定は晴天の日に行い、調査対象部分の日射受熱量が最大となる時間帯、あるいは最高気温•最低気温となる時間帯に測定する。人工的に加熱•冷却を行う場合はこの限りではない。

 

○測定時の留意点
  1. 測定精度および適用限界が気象条件に左右される。
  2. 表面の光沢や汚れにより生じる温度差を欠陥と誤認することがある。
  3. 窓枠や手すりなどの異種材料間の接触部、あるいはベランダなどの凹凸部への適用が難しい。
  4. 測定対象物の形状あるいは立地条件によっては適切な距離あるいは角度から測定が困難な場合がある。
  5. 検出深度は構造物表面から50mm程度が限界である。
  6. 欠陥の深さや空隙の厚さの推定は難しい。