フッ化水素による健康障害【斑状歯(はんじょうし)】

フッ化水素とは

 常温で無色、発煙生で刺激臭のある気体である。水に溶けやすく、水溶液は弱酸性を示す。フッ化水素の水溶液は、フッ酸(フッ化水素酸)と呼ばれる。

フッ化水素の使用状況

 フッ化水素は気体・水溶液ともに反応生が大きく、ガラスやケイ酸塩を侵すのでガラスの模様づけに用いられる。また、金属の洗浄や半導体のエッチング、ガラス彫刻などでも使用される。

フッ化水素の規制

特定化学物質障害予防規則

 特定化学物質障害予防規則とは、化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するために、作業方法・作業環境の整備、健康管理の徹底等について定めた法律である。

 フッ化水素は対象物質であり、第二類物質に定められている。

PRTR法(化学物質管理促進法)

 PRTR法とは、有害性のある対象化学物質を誰がどのくらいの量を環境中へ放出しているのかを把握するための法律である。各事業所等が対象化学物質の排出状況を管理・報告することで、化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境保全上の支障を未然に防止することを目的とした法律である。

 フッ化水素は対象化学物質に定められている。

 ちなみに、PRTRの意味は以下の通りである。

Pollutant:汚染物質

Release:放出する

Transfer:移動

Register:記録

毒物劇物取締法

 毒物劇物取締法とは、急性毒性による健康被害が発生するおそれが高い物質を毒物又は劇物に指定し、保健衛生上の見地から規制する法律である。

 毒物と劇物の違いは毒の強さである。毒物は「大人が誤飲した場合の致死量が2g程度のもの」、劇物は「大人が誤飲した場合の致死量が2-20g程度のもの」である。

 フッ化水素は、毒物に指定されている。

大気汚染防止法

 大気汚染防止法とは、ばい煙排出者に対して排出基準に適合しないばい煙の排出を禁止し、国民の健康の保護と生活環境の保全を目的とした法律である。ばい煙とは、煙とすすのことである。

 フッ化水素は排出基準が指定されている。

水質汚濁防止法

 水質汚濁防止法とは、工場などから公共用水域に排出される水の排出規制や生活排水対策の促進により、公共用水域・地下水の水質の汚濁を防止することと、健康被害が生じたときの事業者の損害賠償責任について定めた法律である。

 水質汚濁法では有害物質の排水基準が定められており、フッ化水素は有害物質に指定されている。

土壌汚染対策法

 土壌汚染の状況の把握と、汚染による健康被害の防止に関する措置を定めた法律である。工場跡地などを再開発し市街地などにする場合、土地の所有者に対し土壌汚染の調査・除去を義務付けている。

 法律内で土壌に含まれる有害物質の基準量を定めており、フッ化水素は有害物質に指定されている。

フッ化水素の健康障害

 フッ酸が皮膚や粘膜に直接接触した場合、強度の化学熱傷を生じる。皮膚から吸収されると血液に入り、カルシウムと結合して低カルシウム血症を生じて、嘔吐、けいれん、腎障害などの全身症状を生じる。慢性中毒では骨の硬化、斑状歯(はんじょうし)、歯牙酸蝕症(しがさんしょくしょう)が生じる。

  • 腎障害
  • 斑状歯(はんじょうし)
  • 歯牙酸蝕症(しがさんしょくしょう)