技術士第二次試験過去問考察【施工計画部門、問3】

 技術士第二次試験建設部門の記述式問題の考察を行う。今回は「0910 施工計画、施工設備及び積算部門」の問3についてである。

○考察結果

 各年度で出題されたテーマは以下のとおりである。他の分野に比べ、漠然としたテーマが多い。平成27年以降は小問が3題で問題文が「~について記述せよ。」となっており、平成26年以前は小問が2題で問題文が「~について論述せよ。」となっている。
 ちなみに、辞書によると記述とは「文を書きしるすこと」論述とは「意見や考えを筋道立てて述べること」である。
 
平成28年
・担い手不足
・不正事案対策
平成27年
・取り組むべき社会資本の整備
・社会インフラの長寿命化
平成26年
・生産性向上
・品質確保
平成25年
・社会資本の維持・管理
・安全管理
以下、過去問を記載する。
○過去問
問3.次の2設問のうち1設問を選び解答せよ。
【平成28年度】
・問3ー1 ⇒担い手不足
 我が国の労働人口が総じて減少する中で、将来にわたる社会資本の品質確保を実現するために、その担い手(建設技術者、建設技能労働者)の中長期的な育成及び確保を促進するために対策を講じる必要があると考えられる。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)担い手不足が生じる要因を2つ挙げ、それに伴って発生する施工分野の課題を記述しなさい。
(2)(1)で挙げた課題について、あなたが実施できると考える具体的な対応策と期待される成果を、発注者、受注者等の立場を明確にした上で記述しなさい。
(3)担い手不足に対応するために、建設部門全体で取り組むべきとあなたが考える方策を記述しなさい。
・問3ー2 ⇒不正事案対策
 平成27年には、免震ゴム支承の偽装、落橋防止装置の溶接不良、杭施工データの流用といった建設工事と直接関わる不正事案が連続的に発覚した。このことは、マスコミでも大きく取り上げられ、エンドユーザーである国民から、建設構造物全般に対してその安全性が疑われるなど、建設部門に対する信頼が大きく揺らいだ。このため、建設技術者は基本に立ち戻って、建設構造物の安全と安心に対するユーザーの満足と信頼の獲得に努めていかなければならない。このような考えに立ち、以下の問いに答えよ。
(1)こうした不正事案の背景にあると考えられる要因を2つ記述しなさい。
(2)ユーザーの満足と信頼を獲得するため、(1)に挙げた要因の対策として、あなたが建設工事において具体的に実施できる施策と期待される成果を、発注者、設計者、元請け、下請け等の立場を明らかにした上で記述しなさい。
(3)(2)を踏まえ、建設部門全体で取り組むべきとあなたが考える方策を記述しなさい。
【平成27年度】
・問3ー1 ⇒取り組むべき社会資本の整備
 建設業は、大規模災害からの復旧や東京オリンピック・パラリンピックの開始準備等の事業を進めているところであるが、今後とも必要な社会資本を提供し、適切な維持更新の役割を担うため、なお一層国民の理解を得つつ、魅力ある産業として持続的に発展していくことが求められている。このような状況を踏まえ以下の問いに答えよ。
(1)建設技術者として取り組むべきと考える社会資本整備の分野を2つ挙げ、その意義を記述せよ。
(2)(1)で挙げた社会資本整備の分野のうちの1つについて、取組を進めるに当たっての課題を2つ挙げ、それぞれの技術的対応策を記述せよ。
(3)(2)で記述した対応策の1つについて、それを実行する際、あなたのこれまでの経験やスキルを踏まえ、どのような役割を果たすことができるかを具体的に記述せよ。
・問3ー2 ⇒社会インフラの長寿命化
 我が国の社会インフラは、高度経済成長期から1980年代にかけて集中的に整備され、今後、一斉に老朽化が進むことが懸念される。このため、社会インフラの長寿命化を目的とした維持管理・更新に当たっては、的確勝つ効率的に取り組むことが重要である。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)社会インフラの維持管理・更新工事を実施する段階において、その実施を阻害する要因を幅広い視点から2つ挙げ、その内容を記述せよ。
(2)(1)で挙げた阻害する要因を排除・低減するために、それぞれについて技術的対応策の内容を記述せよ。
(3)(2)で記述した技術的対応策のうちも1つについて、それを実行する際、あなたのこれまでの経験やスキルを踏まえ、どのような役割を果たすことができるか具体的に記述せよ。
【平成26年度】
・問3ー1 ⇒生産性向上
 東日本大震災の復興事業に加え、大規模自然災害に対する防災・減災対策や社会インフラの老朽化対策、更に東京オリンピック・パラリンピック関連の工事など、今後、建設工事の増加が見込まれている。一方、建設業就業者は近年減少しており、2012年にはピーク時の7割程度となっている。このため、建設業では、増大する建設需要に対応し、より一層の生産性向上が求められている。このような条挙を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)建設現場において生産性を阻害する要因を3つ挙げ、説明せよ。
(2)(1)で挙げた要因に対し、それぞれについて生産性向上に向けた実現可能な技術的解決策を1つ挙げ、その効果を論述せよ。
・問3ー2 ⇒品質確保
 「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の施工に伴い、総合評価落札方式による工事契約が拡大し、極端なタンピング受注などインフラ整備の品質確保に対する懸念は改善されてきた。しかしながら、現場の周辺環境や社会的要請が多様化・複雑化する中で、施工計画策定段階の検討が十分なされていないこと等により、成果の品質が損なわれた施工例が引続き報告されており、円滑な工事の進捗を図りつつ品質を確実に担保する適切な施工計画の策定が益々重要となっている。このような状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)工事を施工する上で、品質確保の観点から施工計画策定時において検討すべき基本的事項を3つ挙げ、説明せよ。
(2)(1)で挙げた3つの基本的事項に対し、それぞれについて検討する上での課題と技術的解決策を論述せよ。
【平成25年度】
・問3ー1 ⇒社会資本の維持・管理
 高度経済成長期に構築された社会資本が耐用年数を迎えつつあるなど、社会資本の老朽化が急速に進んでいる。一方、我が国を取り巻く社会情勢も近年大きく変化しており、限られた財源の下で老朽化が進む社会資本の維持管理・更新を適切に進めることが求められている。そのような背景を踏まえ、施工計画、施工設備及び積算の技術者として以下の問いに答えよ。
(1)あなたが老朽化した施設の維持管理・更新を行うという立場にある場合、取り組むべき次項を3項目挙げ、各項目について実施上の課題を述べよ。
(2)(1)で挙げた3項目の取り組みを実効性のあるものとするために、各課題に対する解決策を論述せよ。
・問3ー2 ⇒安全管理
 建設業における労働災害の死亡者数は、1990年代前半には1000人前後で推移していたが、公共事業投資の大幅な抑制や現場の安全設備・安全管理の充実によって、ここ数年は300人台まで減少した。しかし、重大災害(一時に3人異常の労働者が業務上死傷又はり病した災害事故)は平成21年以降増加傾向にあり、社会的に問題となる事故も発生している。このような状況に対し、施工計画、施工設備及び積算の技術士として以下の問いに答えよ。
(1)建設産業や建設生産システムの現状を踏まえ、重大災害を誘発すると思われる要因を3つ挙げ、それぞれについて述べよ。
(2)(1)で挙げた3つの要因に対して、解決するための具体的な実施方策を論述せよ。