〇後知恵バイアスとは
物事の結果を知った後に、その事象に対して「そうなると思っていた」「予想可能だった」と感じる傾向である。何か事件が起きたら「起きると思っていた」、ある商品がヒットしたら「売れると思っていた」、ピッチャーが打たれたら「打たれると思っていた」と考えてしまう。
物事は「原因」があって「結果」が生じる。逆はない。しかし、後知恵バイアスに毒されると、結果を知ったあとに「あたかも」原因を元々知っていたような気持になる。しかも、本当はランダムな運によってもたらされた結果だったにも関わらず、偽りの原因を後から勝手に創り出すこともある。その結果、後知恵バイアスによって勘違いをしているだけなのにも関わらず、本人は「俺は有能だ」と勘違いしてしまう。
〇人間の未来を予測する力を過信しない
後知恵バイアスとは「今日後知恵で説明がつくならば、昨日予想できたはずだ」と感じる現象である。後知恵バイアスによってこのように感じる事が人間の習性であることを理解しなければならない。未来を予想して意思決定を下すことは、どんなに些細なことでも非常に困難である。何故なら、未来は「〇〇かもしれない」が多数存在するからである。
未来を予想することは困難である。明日は天気が悪いかもしれない、誰かが体調を崩すかもしれない、地震が起きるかもしれない、機械が故障するかもしれない、身内に不幸があるかもしれないなど、予想不可能なイレギュラーは無数にある。普段はほぼ起きないことは、明日もほぼ起きない。しかし、数パーセントの可能性で起きる。そして、数パーセントの可能性で起きるかもしれないイレギュラーの種類は無数にある。すなわち、ほぼ起きないイレギュラーのうちのどれかは起きる可能性が高い。
〇上司は後知恵バイアスだらけである
上司への報告を早くしなさいとよく言われる。それは、上司が意思決定者であり、上司が対外的に説明を行う必要があるからである。しかし、これらの理由は報告を受ける側のメリットである。
では、報告する側のメリットはなんだろうか。それは、後知恵バイアスの防止である。失敗しそうな問題があったときに「〇〇したら失敗しました」と「〇〇したら失敗する可能性があるのですが、このまま進めていいでしょうか?」と言うのでは雲泥の差がある。「失敗しました」と報告する場合は、「そんなやり方では失敗するに決まっているだろう。なぜそんなこともわからないんだ。もっとやり方があっただろう。」と説教が始まるのがオチである。ほかのやり方など物理的に無理でも、感情としてそうなる。まさに、後知恵バイアスである。
一方、事前に「失敗しそうだ」と話をすることで、後知恵バイアスによるわかったつもりを防ぐことができる。意思決定のプロセスに参加させ、失敗に巻き込む。そうすることで、上司に失敗の共犯者としての意識をもたせることができる。