○少数の法則とは
少数の法則とは、ランダム性によりたまたま偏った結果が続いた時に人間が勝手に誤った法則性を見いだし、理由をつけて正当化しようとする心理学的な法則である。大数の法則をなぞらえて命名された法則である。
○大数の法則とは
大数の法則とは、統計の基本定理の1つである。コイン投げの裏表のようにランダムに結果が出る試行を繰り返し行った場合、回数を重ねれば重ねるほど本来の確率に収束するという法則である。
○大数の法則と少数の法則の関係
大数の法則は紛れもない統計的な事実である。少数の法則は人間が統計的に誤った判断を下すという心理学的な法則である。
じゃんけんを例に考える。何も考えずにランダムに出し手を決めた場合、勝敗は5分5分になるのが大数の法則である。何も考えずにランダムに出し手を決めたはずなのに、たまたま負けが続くことがある。仮にある相手とじゃんけんをして5連敗したとする。この時に、「この人とじゃんけんの相性が悪い、私はじゃんけんが弱い」と考えるのが少数の法則である。
ちなみに、じゃんけんで5連敗する確率は「1/2の5乗」で「約3パーセント」である。つまり、30回に1回は5連敗する。仮に毎日この実験を行った場合は、月に1回5連敗する。このように統計的に考えると「じゃんけんが弱い」ではなく、たまたまだと感じることができる。
〇少数の法則から学ぶべきこと
1.大数の法則は正しい
大数の法則は絶対に正しい。大数の法則に反するような結果が出たとしても、それを信じてはいけない。「たまたま」の力は偉大でである。どんな偏った結果も「たま」には出る。
2.そんなに簡単に「法則」は新発見できない
仮に法則性が見つかったように見えても、それは「たまたま」である可能性が高い。人間の感覚は法則を好むため、法則性を信じようとする。その本能を抑制するためには、この「少数の法則」を知識として知る以外はない。
3.個人的な法則は少数の法則の可能性が高い
個人の経験に基づく法則は少数の法則が高い。何故なら試行回数が少ないからである。仮に飲食店へ行って料理を頼んだら、頼んだ料理とは違うものが出てきたとする。「なぜ間違えたんだ!私は今まで何度もこの店に来ているが、間違えられたことはない!昔はもっと接客の質が高かった!」と怒ったとする。しかし、飲食店で働いたことがある人は知っているが、オーダーミスは1日に数回必ずある。「今まで何度も」を月に2回、10年間だとして合計240回。料理一品1000円と仮定して1日の売り上げが30万の店は、注文が1日に300件入る。つまり、300回に1回ミスがある店で、客としてミスを体感するためには、300回注文しなければならない。個人的な経験は大数にはなり得ないのである。
〇少数の法則の使い方
少数の法則は利用しやすい。交渉材料にはうってつけである。証明はできないが事実っぽい事柄を説明・説得するのに使える。この商品を使った私のお客さんはみな満足しているという売り文句で営業をかけることが可能である。建設業においては全てが一品ものなので、少数の法則の宝庫である。使い方は各々の常識・良心にゆだねられる。