○地盤変移の原因と発生機構
・切羽に作用する土水圧の不均衡
土圧式シールドや泥水圧式シールドでは掘進量と排土量に差が生じるなどの原因で切羽に作用する土圧や水圧とチャンバー内の管理土圧に不均衡が生じると、切羽が平衡状態を失い地盤変移が生じる。切羽に作用する土圧や水圧に対して管理土圧が小さい場合は地盤が沈下し、大きい場合は隆起する。
・掘進時の地山の乱れ
シールドのスキンプレートと地山との摩擦や、蛇行修正や曲線掘進に伴う余掘は地山を緩める原因となる。
・テールボイドの発生と裏込め注入の過不足
テールボイドの発生によりスキンプレートで支持されていた地山はテールボイドに向かって変形し、地盤沈下が生じる。これは応力解放に起因する影響である。地盤沈下の大小は裏込め注入の時期や圧力・量に左右される。
・一次覆工の変形および変位
セグメントの継手ボルトの締め付けが不十分だとセグメントの真円度が悪化して変形しやすくなり、地盤沈下の要因となる。
・地下水位の低下
粘性土地盤では切羽からの湧水や一次覆工からの漏水が生じると地下水位が低下し、地盤沈下の原因となる。この現象は地盤の有効応力が増加したことによる圧密沈下である。
○地盤変位の種類
・先行沈下
シールド切羽のかなり前方から発生する沈下である。砂質土地盤の場合は地下水位の低下によって間隙水が減少することで生じる。軟弱な粘性土の場合は切羽で地山を呼び込むことにより生じることがある。
・切羽前沈下(隆起)
シールド切羽が到達する直前に発生する沈下あるいは隆起である。切羽に作用する土水圧の不均衡が原因で発生する。
・通過時沈下(隆起)
シールドが通過するときに発生する沈下あるいは隆起で、シールド外周面と地山の摩擦や余掘りに伴う乱れが原因である。
・テールボイド沈下(隆起)
シールドテールが通過した直後に生じる沈下あるいは隆起で、テールボイドの発生による応力解放や過大な裏込め注入圧等が原因で発生する。
・後続沈下
軟弱粘性土の場合で、主としてシールド掘進による全体的な地盤の緩みや乱れ、過剰な裏込め注入等に起因して発生する。