増厚工法【部材を厚くする】

○増厚工法とは
増厚工法とは、断面の厚みを増やし耐荷力を向上させる工法である。
上面増厚工法と下面増厚工法に大別される。
主にスラブや梁に用いる。

○上面増厚工法
上面増厚工法には「床版上面増厚工法」と「鉄筋補強上面増厚工法」がある。

・床版上面増厚工法
床版コンクリート上面を切削、清掃後、鋼繊維補強コンクリートを打ち込み床版を増厚することで、部材の性能を向上させる工法である。主にRC床版の押し抜きせん断に対する耐荷性能の向上を目的としたものであり、中立軸の上昇に伴う曲げ耐力の向上が期待できる。

・鉄筋補強上面増厚工法
上記同様、切削・清掃後、補強鉄筋を配置して、補強コンクリートを打設して増厚する。
断面内に補強鉄筋を配置することで、負の曲げモーメント(上に凸)の耐荷性能向上を目的としている。

○施工手順
1.切削
既設のアスファルト舗装ならびに床版コンクリート上面を切削する

2.清掃
切削面をスチールショットブラストなどで清掃する

3.コンクリート打設
鋼繊維補強コンクリートを打設する。通常は60mm程度の厚みである。

○上面増厚工法に用いるコンクリート
上面増厚工法は、橋面上での工事となり交通規制を伴うため、工期の短縮を目的として超早硬セメントを使用する例が多い。交通規制が可能な路線であれば、早強セメントを用いた鋼繊維補強コンクリートを用いることも可能である。

○下面増厚工法
下面増厚工法は、床版下面を補強して部材の耐荷力を向上させる工法である。正の曲げモーメント(凹形)に対する剛性を高める補強方法である。
床版下面に鉄筋などの補強材を配置し、増厚材料として付着性の高いモルタルを用いた左官仕上げや吹付コンクリートを施工する。ポリマーセメントモルタルを用いた下面増厚工法は、従来は左官仕上げによる人力施工だったが、吹付施工が可能になり施工性・経済性が改善された。
下面増厚工法は、主に曲げ耐力の向上を目的としており、せん断抵抗を失った床版へ適用する場合は、別途床版の打換えの検討が必要である。