受熱温度の推定【火害のダメージを推定】

○受熱温度の推定
 受熱温度の推定とは、火害を受けたコンクリートの温度が何℃まで上昇したかを推測することである。温度によってコンクリートが受けるダメージは大きく異なるため、受熱温度の推定結果により対策が異なる。

 

○受熱温度と損傷の関係
 【100℃】
・セメント硬化体中の遊離水・結晶水が消失
 【200℃】
・受熱温度が200℃以内だと、半年後に圧縮強度は火災前とほぼ同等まで回復する
・受熱温度が200℃以内だと、半年後に弾性係数は80%程度まで回復する

 

 【300℃】
・圧縮強度の低下が大きくなる(80%)
・弾性係数の低下が大きくなる(50%)
PC鋼材の機械的性質が低下
・受熱温度が300℃を超えたと推測される場合は、コアを採取して強度を確認することを推奨されている。

 

 【500℃】
・圧縮強度が常温の50%になる
・弾性係数は常温の20%になる

 

 【500〜580℃】
・遊離アルカリである水酸化カルシウム(Ca(OH)₂)が熱分解する
中性化が進行する
中性化深さを測定し、火害深さを推定することができる

 

 【600℃】
・600℃まではセメントペーストは加熱により収縮する
・600℃までは骨材は加熱により膨張する

 

 【700℃】
・セメントの遊離水や結晶水が完全に脱水する

 

 【1200℃】
・1200℃以上で長時間加熱すると表面から溶解する

 

○UVスペクトル法
 UVスペクトル法とは、波長を変えながら「UV(紫外線)」を対象物に照射し、波長ごとの吸光度を調べる方法である。「スペクトル」とは波長の違いによって分解し、波長の順に並べるという意味である。
 最初に健全な部分のコンクリートを採取・加熱し、UVスペクトル分析を行い吸光度と温度の関係を求める。次に、火害を受けたコンクリートのUVスペクトルを分析して受熱温度の分布を推定する。

 

○X線解析
 コンクリートの水和生成物の結晶の変化を、X線解析法で推定する。X線解析法とは、結晶格子にX線を照射するとX線が回折する現象を利用して分析を行う手法である。

 

○示差熱重量分析
 あらかじめ健全なモルタルを加熱し、重量・自由水や結晶水の脱水・SiO₂(二酸化ケイ素)の変態・炭酸ガスの放出などの変化と温度の関係を調べる。次に、火害を受けたコンクリートについてこれらの項目を調べ、受熱温度を推定する。
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